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南無阿弥陀仏をとなうれば この世の利益きわもなし [月々の法語]

南無阿弥陀仏をとなうれば この世の利益きわもなし
When we say “Namu-amida-butsu,” the benefits we gain the present are boundless.
浄土和讃 現世利益和讃第四首

現世利益とは無縁なはずの真宗の教えに、十五首の「現世利益和讃」があります。今月の和讃はその四番目です、まず全体を見てみましょう。

 南無阿弥陀仏をとなうれば
 この世の利益きわもなし
 流転輪廻の罪消えて
 定業中夭のぞこりぬ

 さて、人間の煩悩を「得が好きで損が嫌い」と読み解いた方がいらっしゃいます。この理屈だと、誰もが煩悩を持った凡夫だと言えます。そして煩悩があるからこそ「この自分にだけは悪いことが起きないでほしい、良い事が起きてほしい」と現世利益を願う心が湧いてきます。これは人間として当然の思いですし、またこうした心の働きを利用する宗教も多くあるのが現実です。
 先日、家のポストにある新興宗教のチラシが入っていました。そこに信者の体験談が載っていたのですが、現世利益のオンパレードでした。一つ目は、会社の経営難に悩んだ社長が入信すると、会社の業績は急に上向き、ついでに腰痛も治ってしまったという話。二つ目は、難病の子を抱える親が入信すると、その日から子どもが走り回れるようになったと言う話でした。他にもありましたが、あまりの荒唐無稽さに驚きました。

 親鸞聖人の教えは、こういった現世利益をきっぱりと切り捨てています。現世利益を求めてしまう人間の切ない思いは理解しても、決してその思いを利用する事はありません。どんなに神仏を拝んでも、悪いことが起きるときは起こるという立場です。
 ここで十五首の現世利益和讃を見てみますと、病気が治ったり金運に恵まれるなどの現世利益は全く書かれていません。ただ前世の罪は消え、諸仏や龍神、四天王や魔王でさえもが念仏者を護持する、と繰り返し記されています。
 人間は弱い生き物です。特に科学の進んでいない時代では、様々な災害や病気が悪魔や霊の仕業とされ、恐れおののきました。親鸞聖人の現世利益和讃は、その人々を迷信から解放するためのものだったのではないでしょうか。どんなに恐ろしい悪魔も鬼神も、阿弥陀仏の前にはその力を失う、だからいたずらに恐れるのではなく、与えられた人生を精一杯生ききりなさい。そしてやがて病に倒れいのちを終えるときが来ても、必ず光あふれる浄土へと救われていく身だと説いたのです。

 考えてみれば、病気が治っても財産を手にしても、それで人の悩みは無くなりません。せいぜい一時ホッとして、また新しい悩み苦しみに捉われてしまう対症療法です。親鸞聖人の説く念仏の教えは、苦しみの受け方を根本から変えていく、原因療法と言えるのではないでしょうか。
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物部

すごい、阿弥陀、すごい
by 物部 (2013-05-29 20:54) 

ボーズandカナコ

>物部さん
昔の記事にコメントが入り、ビックリしました (^_^;)
有り難うございます。
by ボーズandカナコ (2013-05-30 00:50) 

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