2011年4月号 [和庵だより]
◇三月十一日◇
三月十一日は第二金曜日、なごみ庵の法話会の日でした。午後一時からの昼の回、お経を勤めて法話をさせて頂いて、賑やかに茶話会。
穏やかな日で話も弾み、一時間ほど経った時、ゆらり、と大地が揺れました。「地震だ!」花を活けている花瓶を押さえましたが、揺れは一向に収まらず、今まで経験した事が無い大きな揺れに、お参りの方とともにただただ戸惑うばかり。
やっと揺れが収まり、皆さんが帰った後テレビに釘付けに。最初は横浜中華街や都内の被害の様子が映りましたが、やがて東北に津波が押し寄せる様子が何度も何度も放映されました。
船や車が玩具のように翻弄され、町や道路や美しい農地があっけなく呑み込まれて行く様子を、映画の特撮であってほしいと思いながら、為す術もなく眺めるしかありませんでした。
三週間近くが経ちましたが、いまだ被害の全容もつかめません。それどころか原発の様子に脅えつつ、一進一退の様子を息を呑んで見守る日々です。
このままゆっくりと事態が好転し、四月八日の法話会で皆さまと無事を喜び合える事を念じています。
最後になりましたが、今回の震災で亡くなった方、被害を受けた方々に衷心よりお見舞いを申し上げます。
☆仏教のことば☆
「世間虚仮」
元NHKアナウンサーの池上彰さんが、ニュースを分かりやすく解説する番組が人気です。
震災後にも同番組の特番があり、地震のメカニズムや原発について詳しい内容が放送されました。ご覧になった方も多いと思います。
地球には核があり、その周りをドロドロに溶けたマグマが覆い、その外に薄く冷えて固まったのが、地表です。ちょうど温めた牛乳の表面に薄い膜が張っているようなものです。
この解説を聞いて愕然としました。私たちが生活をしている大地。その存在の強固さに安心しきって身を任せていましたが、地球全体で考えると、それは牛乳の表面に出来る薄膜のようなものでしかなかったのです。譬えの表現であっても、それはショックでした。
その時、ふと思い出したのが聖徳太子の言葉「世間虚仮」でした。この世界や人間の営みなど、虚ろで仮そめのものでしかない、という意味です。
しかし、この言葉には「唯仏是真」という後の句が続きます。「虚ろで仮そめのこの世界に、ただ仏の教えのみが真実である」という意味です。
諸行無常という言葉を知ってはいても、それを腹から理解する事の出来ない私たちです。そんな泡沫のような私たちの拠り所になるのが、仏さまの教えと、お念仏ではないでしょうか。
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