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2011年8月 [月々の法語]

真理の一言は 悪業を転じて善業と成す

Namo-amida-butsu, the message of truth, transforms evil karma into good.

『教行証文類より』


 今年のカレンダーの言葉は、親鸞聖人の主著である『教行証文類(教行信証)』から抜粋されています。

 意味としては、真理の一言、つまり南无阿弥陀仏のお念仏は、悪い行いの罪を転じて、善い行いの功徳とする、となります。


 ここで言う善業とは、仏教の正統派であるお釈迦さまのたどった道をたどる、つまり自分の力で正しく修行を行い悟りを目指すことです。また自らが直接修行をしなくても、正しい修行をしている僧侶をサポートしたり、寺院や仏塔を造るような行いを指します。つまり今も昔も、ごく一部の人間にしか出来ないという事です。


 対して悪業とは、狩猟業や農業で他のいのちを奪ったり、昔はまっとうな稼業とされなかった商いなどの行為です。親鸞聖人は35歳で越後に流罪になります。京の都から遠く離れたいなかの土地で、悪業を積み重ねて生きるしかない人々に出会い、その人たちの悲しみを感じたのだと思います。いま越後や関東での親鸞聖人の事を調べているのですが、京都で法然上人に出会って平等の救いを学んだ聖人は、辺境に行くご縁があったからこそ、その学びを開花できたように思います。


 さて、お坊さんというと肉や魚を食べてはいけない、というイメージがあるかと思います。しかしもともとそんなルールは無く、お釈迦さまが亡くなった原因は豚肉料理にあたったため、という説があるぐらいです(キノコ料理の説もあります)。


 お釈迦さまの時代、僧侶はお鉢を持って托鉢に出ました。そして家々を回って食べ物を頂きました。これは「乞食行」という修行でしたが、食べ物を分けてもらう行為だけが抜き出されて、いわゆる物乞いの事を「こじき」と言うようになりました。


 乞食行で頂いた食事は、 それが野菜だろうと肉だろうと魚だろうと、好き嫌いを言わずにちゃんと食べなければいけません。ただ「三浄肉」というルールはありました。その生き物が殺された場面を見ていない・自分の為にその生き物が殺されたと聞いてない・自分の為にその生き物が殺されたと知らない、という3つのルールです。


 やがて仏教が中国に入ると、僧侶は自分たちで作務、つまり労働や農業をして、生活の糧を得るようになりました。これは出家に対して施しをする習慣があったインドと、その習慣が無かった中国との環境の違いによるものです。

 先ほど悪業の説明で「農業で他のいのちをうばわない」とありましたが、インドの仏教では植物のいのちを摘み取る事や、畑を耕して土中の虫を殺す事を避けたのです。しかし中国でのお坊さんは農業をせざるを得なかったので、動物や魚を食べない、という新たな決まりが生まれたのです。



 さて、先ほど「お釈迦さまは豚肉料理(またはキノコ料理)にあたって亡くなった」と言いました。お釈迦さまが亡くなってゆく過程を描いた「大般涅槃経」という経典に記されていますが、この料理を供養したのはチュンダという鍛冶師の青年だったそうです。


 老齢になり衰えたお釈迦さまが、鍛冶師チュンダの住む村を通りかかります。敬けんな仏教徒であったチュンダは多いに喜び、お釈迦さまの一行にぜひ供養をさせて欲しい、と願い出ます。その申し出を受けてお釈迦さまは食事を頂くのですが、どうやらその料理が傷んでいて、お釈迦さまは激しい腹痛に襲われます。今で言う食中毒だったと言われています。


 平静を装うお釈迦さまでしたが衰弱は激しく、しばらく進んだ後に動けなくなってしまいます。ここでお釈迦さまは弟子のアーナンダに対し「私がいのちを終えた後、おそらく誰かが「毒の料理を出した」とチュンダを責めるだろう。しかし私はチュンダの料理を最後の供養としていのちを終え、完全なる悟りに到るのだ。だからチュンダの料理は私が生涯に受けた供養の中でも最も重要なものの一つである。チュンダを責める者が現れたら、よく諭して欲しい」と言いました。


 チュンダの料理は、結果としては傷んでいてお釈迦さまが亡くなるきっかけになりました。ここだけを見れば悪業です。しかしお釈迦さまの慈悲によってそれは善業となりました。

 私たちの行いも、どれをとっても悪業です。たとえ表面上は善い行いをしているように見えても、心の奥底はそうではないと親鸞聖人は見抜いておられます。その悪業も、阿弥陀仏が慈悲の心を持って私たちに与えて下さったお念仏の前では力を失い、お念仏の功徳だけが残る。これが今月の言葉の意味ではないでしょうか。


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