SSブログ

2014年5月の法語 [月々の法語]

きのう聞くも 今日またきくも ぜひに来いとの およびごえ
What I heard yesterday, and today again, is the Buddha’s voice calling me to come without fail.
お軽

 今年のカレンダーの法語は様々な念仏者や僧侶の言葉から選ばれており、5月は妙好人のお軽さんの言葉です。
 お軽さんは、江戸時代の末期(1801年)、現在の山口県下関の沖に浮かぶに六連島で生まれました。金子みすゞさんも同じ山口県の出身ですから、昔からこの近辺は浄土真宗に熱心な人物を輩出する土地柄だったのでしょう。
 お軽さんはみすゞさんと違い、少女時代は非常に活発、というかおてんばだったようで、地元の若者には「お軽と夫婦にはなりたくない」と陰口を言われていたようですが、やがて幸七という夫を迎えることとなりました。

 ところがこの幸七さん、下関や北九州に行商に行くのですが、そこに愛人ができ、お軽さんの心には嫉妬の炎が燃え上がります。今でしたら探偵社や家庭裁判所に行ったりするのでしょうが、お軽さんが駆け込んだのは島にただひとつのお寺、西教寺さん。ここで夫の浮気のことを相談すると…

住職「幸七さんの浮気はあんたのためにはかえって良かった」
お軽「良かったとは何ですか ! 」
住職「こんな事がなければ、あんたは仏法を聞くような人ではない。だから“良かった”のじゃ」

というやり取りがあり、やがて熱心に仏法を聴き始めるようになります。
 けれどなかなか真宗の教えが腑に落ちないでいたようですが、35歳の時に風邪をこじらせ生死の境をさまよった末に、ストンと飲み込むことが出来たと言われています。

 こうしてお寺に通い生き生きとしている妻の姿に動かされたのか、やがて夫の幸七や子どもたちも一緒にお寺に通うようになります。後に2人は互いを、如来の慈悲に遇わせてもらう導き手となった善知識、と述べていたそうです。

 またこの頃からお軽さんは、俳句でも短歌でもない、自由な歌を詠むようになります。今月のカレンダーの言葉もその歌ですが、お軽さんは文字の読み書きができないので、島のお寺、西教寺に駆け込んでは住職に書き留めてもらっていたものが、今に伝わっています。

 さて、今月のことば「きのう聞くも 今日またきくも ぜひに来いとの およびごえ」ですが、これは聞法の慶びを歌に表したものだと思います。六連島からかなり東、瀬戸内海の島では毎朝お寺に島民が集まり、朝のお勤めをしてから一日が始まるという場所があるそうです。おそらく六連島でも同じような習慣があったのではないでしょうか。そして朝のお勤めが終わると、住職がひと言法話をしていたかもしれない。毎日のことですから、毎回毎回まったく違う話をしていたわけではないでしょう。しかしお軽さんはこのお話しを、仏さまから「ぜひお浄土にいらっしゃい」という「お呼び声」として慶ばれていたのではないでしょうか。

 お軽さんは56歳のとき、コレラで亡くなりますが、こんな辞世の句を残しています。お浄土に必ず往生することを、確信していらしたことがわかります。
「亡きあとに 軽を尋ぬる人あらば 弥陀の浄土に 行ったと答えよ」

nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:blog

nice! 1

コメント 2

長さん

お軽さん。夫の浮気で破局にならず幸せで良かったですネェ。このケースは「よりが戻っ」た幸運が、信心を支えているように、「六連島のお軽物語」話を理解するのが、ごく自然かと。かなり多数のサイトに、この話載ってますが。「破局にならなかった原因」に突っ込んで、解説しているサイトはさすがに無いですね。昔のことですので、情報も少ないでしょうし。察するに、幸七氏が初期の頃、お軽に無くて愛人に求めたのは、町娘の教養ですかね。江戸時代の島の西教寺の和尚さん。さすがに当時の教養人だったのでしょうね。朱に交われば、お軽さんも、赤く染まるのパターンだったのでしょう。その人格の変化で、結局「よりが戻っ」て、一家安泰に暮らしたんでしょうね。話を聞き冒頭の法語に、それがにじみ出ている感じがしました。
by 長さん (2014-05-27 17:00) 

ボーズandカナコ

>長さん
なるほど〜、深い読みですね!
by ボーズandカナコ (2014-05-27 23:20) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。