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2020年1月の法語 [月々の法語]

人も草木も虫も 同じものは一つもない おなじでなくて みな光る
While people and plants and insects all differ, the Buddha’s inner light isines forth in all.
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今年の法語カレンダーは、僧侶に限らず広く念仏者の言葉が引かれています。
1月は仏教詩人として名高い榎本栄一さんの言葉です。

同じ種類の植物や昆虫、鳥や動物など、それぞれ見た目の個性はあって本人(?)たちが見ればお互い見分けはつくのでしょうが、人間から見ればなかなか区別はつきません。それどころか同じ人間でも肌の色が異なれば見分けがつきにくいものですし、オジサンになってくるとナントカKB48とかカントカ坂46とかのお嬢さんたちも見分けがつかなくなってきます。


とはいっても、どれほど似通って見える生きもの、たとえばアリの群れを見て個体識別できる人はいないでしょうが、それでもひとつひとつ異なる尊い「いのち」を生きているのは間違いのないことです。

今月のカレンダー、榎本栄一さんの言葉は、そうした「いのち」ひとつひとつがかけがえのないものであると書かれています。またその「いのち」が「みな光る」と書かれています。いのちが光るとはどういうことでしょうか。


浄土真宗でよくお勤めされるお経に「歎仏偈(たんぶつげ、宗派によって讃仏偈(さんぶつげ)とも呼ばれる)」というものがあります。大無量寿経という長い経典の一部ですが、冒頭に「光顔巍巍(こうげんぎぎ)」という言葉があります。

阿弥陀如来の前身である法蔵菩薩が、師の世自在王仏に向かってこの言葉を述べるのですが、意味としては「あなたさまのお顔は気高く光り輝いております」と誉め讃える内容です。ですのでお経のタイトルが「讃仏偈=世自在王仏を讃える偈」となっています。

歎仏偈は「歎く(なげく)」という文字なので意味合いが変わってきそうですが、歎くとという字は「感歎する」など、とても感心した場合にも用いられます。ですので「世自在王仏の光り輝く気高いお姿に感激して読まれた偈」という意味になります。

ちなみに「偈」とは、リズムや文字数が整っているお経を指します。
また、同じく大無量寿経で、教えを説くお釈迦さまの姿を見た弟子の阿難が「光顔巍巍」と表現しています。

話を戻すと、仏さまは気高く光り輝くお姿をしておられるわけです。それを表しているのが仏像の後ろにある光背(後光)です。仏さまによってさまざまな形をしていますが、これも仏さまが輝いていることを表現しています。

さらに西洋に目を向けると、天使の頭の上に輪っかが乗っている絵を見たことがあると思いますが、これはもともとキリスト教の宗教画でイエス・キリストや聖母マリア、聖人の頭の後ろに描かれた後光が形を変えたものと言われています。東洋でも西洋でも、仏教でもキリスト教でも、尊い方は光り輝いて見えたということでしょう。


さて、仏さまや神さまが輝いて見えるというのは感覚的にうなずけると思いますが、今月のカレンダーの言葉は人も草木も虫も「みな光る」と書かれています。これはどういうことでしょうか。

アカデミー賞を受賞した日本映画、『おくりびと』をご存知でしょうか。葬儀社で働く納棺師を描いた作品ですが、この映画の原案は青木新門さんの書かれた『納棺夫日記』です。これは非常に浄土真宗の要素が色濃い本なのですが、映画化の際に宗教性がすっかり消されてしまい、青木新門さんは「別物だから原作と書かないでほしい」といった経緯があります。

この本の中では何度も、いのちが光り輝いて見えるという描写が登場します。ご自身でも何度も経験されていますが、文中に若くして亡くなった医師の言葉が紹介されています。その医師はガンの転移の宣告を受け、背筋の凍るような思いをします。しかし帰り道、世界がとても明るく見えることに気がつきます。またそのあたりの人や植物や電柱まで光り輝いて見える。自宅に戻ると妻もまた、手を合わせたいほど尊く光り輝いて見えたのだそうです。

考えてみれば、私たちひとりひとりの「いのち」がここにあることは、奇跡以外の何ものでもありません。毎朝目が覚めるのも当たり前のことではありません。しかし普段はそれに気づけずに私たちは生きていますが、いざ生命の危機を迎えると「当たり前」が崩れ去って「いのち」の尊さを見通せる視線をいただけるのでしょう。

榎本栄一さんの言葉は、詩人の繊細な感性でもって「いのち」が尊く光り輝いている様子を表現したものなのでしょう。

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