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2019年10月の法語 [月々の法語]

「信心」というは、すなわち本願力回向の信心なり
Shinjin is the entrusting heart that is directed to beings through the power of the Primal Vow.
2019.10法語.png
今年の法語カレンダーは親鸞聖人のさまざまな著書から言葉が引かれており、10月は親鸞聖人の主著である『顕浄土真実教行証文類』からの一節です。

<解説>
一般には『教行信証』という略された題で知られる親鸞聖人の主著ですが、教・行・信・証・真仏土・化身土の6巻に分かれています。今月の言葉は3つ目の信巻に書かれており、『仏説無量寿経』という経典に記されている言葉を次々と解説する内容の一部が抜き出されています。

信心というと通常は、自分自身が神仏を信じる心を起こしている、あるいは胸に抱いているという意味で捉えている方が多いかと思います。しかし親鸞聖人はその信心を「本願力回向の信心なり」つまり「阿弥陀如来の本願の力から与えられた信心なのですよ」とおっしゃっています。

自分自身が阿弥陀如来を信じる心すら仏さまから与えられたものだという受け止めは、「絶対他力」と表現される親鸞聖人の思想の真骨頂と言えるでしょう。

<私のあじわい>
先日、相模原市の「市民・大学交流センター」という場所で「死」をテーマにお話をさせていただきました。1時間の話を終え、質疑応答に移ると数名の方からいろいろと質問をいただきました。その中で60代ぐらいと思われる男性から「死んだらどうなるのですか?」と尋ねられました。

ハッキリ言って困りました。だって死んだことありませんので「こうですよ」とは言えないわけです。でも「講釈師、見てきたようなウソをつき」という言葉がありますが、僧侶も見てきたように極楽浄土の様子を話すわけです。ですので私はその男性に「西の彼方にある極楽浄土に、仏さまとなって生まれていくと聞いております」と極めて教科書的な答え方をしました。

すると男性からは「そういう話じゃなくって」と返ってきたのです。言葉に込められたニュアンスとしては、「そんなおとぎ話のようなことは聞いてない」というふうに感じられました。

でも実は私は、「この世での命を終えると、仏となって極楽浄土に生まれていく」と信じているのです。もちろん実際に地球上にそういう場所が実在したり、仏という存在が生身の身体を持って存在するという信じ方はしていません。何と言葉に表したらよいか分かりませんが、漠然としつつ、でも確固として信じているのです。

前提が違う両者の問答ですから不完全燃焼で終わってしまいましたが、私としてはすっきりしません。自分が何故、一般的な現代人がおとぎ話のようだとすら思ってしまう話を信じていられるのか考えてみました。すると思い当たったのが、親鸞聖人の主著に書かれている「教行信証」だったのです。

一般的な仏教では、僧侶は正式な書名の順で悟りを得るとされています。つまり「教(教え)」があり、「行(修行)」を重ね、「証(悟り)」に至るという順番です。しかし親鸞聖人は、行と証の間に「信」を入れました。親鸞聖人は「信」ということを、とても大切に捉えていたのです。

自分になぞらえると、まず本を読んだり東京仏教学院に通ったりして「教」を学びました。そして毎朝尊前で手を合わせ、お経を上げお念仏を称えていますが、これが「行」です。そうした日々の「行」が、知らず知らず「信」を育んでいるのではないかと思い当たりました。

喩えると、野球をしたことがない人がイチローからバッティングの理論を聞かされ、バットを渡され「さあ、打ってみなさい」と言われてもバットはボールにかすりもしないでしょう。

しかし教えてもらった理論を胸に、毎日毎日バットの素振りを何年も繰り返して再びバッターボックスに立ったらどうでしょう。もちろん素振りだけでポンポン打てるようになるわけではないでしょうが、しかし最初に打席に立った時とは明らかに違い、「打てそうだ」という感覚が得られると思います。

質問をした男性と自分に何か違いがあるとすれば、こういうことだったのではないかと思い至りました。そして、これも感覚的な話になるのですが、私はこんな自分になったことを「自分のおかげ」とは思えません。もちろん勉強したりよほど体調が悪くなければ毎朝のお経を上げたりと、自分で努力をしていないわけではないのですが、それでも全て自分の手柄だとは思えないのです。

自分の努力や判断を超えたことに動かされ、今の自分になっている。だからこそ「仏さまとなって浄土に往く」と信じるこの気持ちも、親鸞聖人が説かれたように「仏さまから回向されたもの」と受け止められているのかもしれません。

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