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2020年2月号 [和庵だより]

◇ 解き、ほぐれる ◇
(自死・自殺に向き合う僧侶の会 会報7号 住職による巻頭言)

秋を迎える頃、「自死・自殺に向き合う僧侶の会」の会合は緊張感を増していきます。宗派も住んでいる地域も異なる私たちは顔を合わせる機会が少なく、秋口から12月の追悼法要の準備を始めるからです。

1998年に3万人を超えた日本の自死者数は、さまざまな努力や施策がなされ、2012年には年間3万人を下回り、2018年は20,598人と減少が続いています。

一方、毎年12月1日に開催される「いのちの日 いのちの時間 東京」の参列者は、2007年の第1回から増減をしつつ、おととし初めて200名を超えました。年単位の自死者数は減っているとはいえ、「自死遺族」そのものは増え続けているのだと改めて思い知らされ、私たちの力の及ばなさを痛切に感じます。

私たちが抱く緊張感の要因のひとつは、200名に達する参列者おひとりおひとり、全員が喪主と言える立場にあることだと気付きました。たとえばご法事に20名の方が参列されていても、故人とそれほど近しくなかった親戚などもおられるでしょうから、喪主やそれに近い立場の方はほんの数名です。

それに対して追悼法要では、そこにいる全員が喪主の気持ちでその場にいらっしゃいます。深く大きな苦しみを抱き、また亡き方への追悼の念を胸に、手を合わせておられるのです。

ご遺族にとって亡くなった大切な人は数万分の1という数字ではなく、人生の大きな部分を占める人、あるいは人生の全てと言っても過言ではない人であったのです。だからこそ、参列者の背中や横顔を見て私たちは身の引き締まるような思いを覚え、微力ではあっても一所懸命に追悼法要をお勤めさせていただいております。そして、そこには法要を執り行う側と参列する側という垣根は無くなり、ご遺族も私たち僧侶も、そして亡き方も共に仏さまの慈悲のまなざしに見守られながら、そっと手を合わせているように感じられます。

日が傾きつつある師走の午後に始まった法要が茶話会を経て閉会し、参列者が会場を後にする頃にはすっかり日も暮れ、街には灯がともります。帰路に着く皆さまの背を見送りつつ、秋口から抱いていた私たちの緊張感も、白い息とともに微かに解きほぐれていきます。そして、皆さまの両肩にのしかかった計り知れぬ重荷もまた、ほんの1グラムでも軽くなり、苦しみや悲しみが少しでも解きほぐれていってほしい、そう心から願うのです。


◎ お 知 ら せ ◎

◎オリジナルお経本&お経CDの販売
なごみ庵オリジナルのお経本とお経CDが完成しました。
お経本には、ご自身の大切な方の名前が書き込める「私の過去帳」ページもあります。
CDは住職・坊守の男女混声のお経と、坊守による『歎異抄』朗読が収録されています。
それぞれ500円で、郵送ご希望の方は別途送料200円をお願いしております。

◎写経会 午後の部 新設! 2月21日(金)15時より
今まで第3金曜日の10時30分より開催していた写経会ですが、満席の状態が続いていました。しかし新規希望者も多いため、2月から15時の部を新たに増設することになりました。参加ご希望の方は、準備の都合上ご連絡ください。
用紙・筆ペンはこちらで準備してありますので、手ぶらでご参加可能です。

◎高座バトル☆ルーキーズ 2月29日(土)16時 恵比寿 寺子屋ブッダ 書坊
同じお題で落語家と僧侶がトークバトルする人気イベント。住職は今回で3回目の登場になります。お相手は若手人気落語家の桂宮治さん。お題はなんと「悪」!
お題の落語→お題の法話→トーク→自由な落語、と盛りだくさんで入場料は2500円です。

◎春のお彼岸法要 3月22日(日)13時
別紙の通り、法要のあと坊守による絵本の朗読と法話を予定しています。
お子さん、お孫さんもぜひお連れください。

◦神之木地区センター写経会 2月4日(火)・18日(火) 18時30分
◦死の体験旅行 2月19日(水)・3月18日(水) 19時 豊島区 金剛院
        3月12日(満席)・4月23日(木) 18時30分 神奈川大学 生涯学習
◦自死遺族の集い 1月23日(木)・2月27日(木) 10時30分 築地本願寺にて

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2020年1月の法語 [月々の法語]

人も草木も虫も 同じものは一つもない おなじでなくて みな光る
While people and plants and insects all differ, the Buddha’s inner light isines forth in all.
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今年の法語カレンダーは、僧侶に限らず広く念仏者の言葉が引かれています。
1月は仏教詩人として名高い榎本栄一さんの言葉です。

同じ種類の植物や昆虫、鳥や動物など、それぞれ見た目の個性はあって本人(?)たちが見ればお互い見分けはつくのでしょうが、人間から見ればなかなか区別はつきません。それどころか同じ人間でも肌の色が異なれば見分けがつきにくいものですし、オジサンになってくるとナントカKB48とかカントカ坂46とかのお嬢さんたちも見分けがつかなくなってきます。


とはいっても、どれほど似通って見える生きもの、たとえばアリの群れを見て個体識別できる人はいないでしょうが、それでもひとつひとつ異なる尊い「いのち」を生きているのは間違いのないことです。

今月のカレンダー、榎本栄一さんの言葉は、そうした「いのち」ひとつひとつがかけがえのないものであると書かれています。またその「いのち」が「みな光る」と書かれています。いのちが光るとはどういうことでしょうか。


浄土真宗でよくお勤めされるお経に「歎仏偈(たんぶつげ、宗派によって讃仏偈(さんぶつげ)とも呼ばれる)」というものがあります。大無量寿経という長い経典の一部ですが、冒頭に「光顔巍巍(こうげんぎぎ)」という言葉があります。

阿弥陀如来の前身である法蔵菩薩が、師の世自在王仏に向かってこの言葉を述べるのですが、意味としては「あなたさまのお顔は気高く光り輝いております」と誉め讃える内容です。ですのでお経のタイトルが「讃仏偈=世自在王仏を讃える偈」となっています。

歎仏偈は「歎く(なげく)」という文字なので意味合いが変わってきそうですが、歎くとという字は「感歎する」など、とても感心した場合にも用いられます。ですので「世自在王仏の光り輝く気高いお姿に感激して読まれた偈」という意味になります。

ちなみに「偈」とは、リズムや文字数が整っているお経を指します。
また、同じく大無量寿経で、教えを説くお釈迦さまの姿を見た弟子の阿難が「光顔巍巍」と表現しています。

話を戻すと、仏さまは気高く光り輝くお姿をしておられるわけです。それを表しているのが仏像の後ろにある光背(後光)です。仏さまによってさまざまな形をしていますが、これも仏さまが輝いていることを表現しています。

さらに西洋に目を向けると、天使の頭の上に輪っかが乗っている絵を見たことがあると思いますが、これはもともとキリスト教の宗教画でイエス・キリストや聖母マリア、聖人の頭の後ろに描かれた後光が形を変えたものと言われています。東洋でも西洋でも、仏教でもキリスト教でも、尊い方は光り輝いて見えたということでしょう。


さて、仏さまや神さまが輝いて見えるというのは感覚的にうなずけると思いますが、今月のカレンダーの言葉は人も草木も虫も「みな光る」と書かれています。これはどういうことでしょうか。

アカデミー賞を受賞した日本映画、『おくりびと』をご存知でしょうか。葬儀社で働く納棺師を描いた作品ですが、この映画の原案は青木新門さんの書かれた『納棺夫日記』です。これは非常に浄土真宗の要素が色濃い本なのですが、映画化の際に宗教性がすっかり消されてしまい、青木新門さんは「別物だから原作と書かないでほしい」といった経緯があります。

この本の中では何度も、いのちが光り輝いて見えるという描写が登場します。ご自身でも何度も経験されていますが、文中に若くして亡くなった医師の言葉が紹介されています。その医師はガンの転移の宣告を受け、背筋の凍るような思いをします。しかし帰り道、世界がとても明るく見えることに気がつきます。またそのあたりの人や植物や電柱まで光り輝いて見える。自宅に戻ると妻もまた、手を合わせたいほど尊く光り輝いて見えたのだそうです。

考えてみれば、私たちひとりひとりの「いのち」がここにあることは、奇跡以外の何ものでもありません。毎朝目が覚めるのも当たり前のことではありません。しかし普段はそれに気づけずに私たちは生きていますが、いざ生命の危機を迎えると「当たり前」が崩れ去って「いのち」の尊さを見通せる視線をいただけるのでしょう。

榎本栄一さんの言葉は、詩人の繊細な感性でもって「いのち」が尊く光り輝いている様子を表現したものなのでしょう。

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渋谷ハンズお寺サークル [その他色々]

高校・大学と渋谷が乗り換え駅でした。
そして雑貨やアイディア用品が好きな自分にとって、渋谷はハンズとロフトがある楽しい街。

特に渋谷ハンズは3つの建物が組み合わさったような構造で、B2Cフロアから上に上がるとB1A、さらに上がるとB1B→B1C→1A→1B……と螺旋の塔を上がっていくような造りです。

雑貨好きな私はペン1本買うのでも最上階までエレベーターで上がり、1フロアずつ巡回(笑)して1〜2時間滞在するのもザラで、坊守(妻)と出かける時はハンズに寄るのを拒否されるほどです (^_^;) 
私にとってはまさに夢の国、いえ聖地と言っても過言ではありません!


そんな渋谷ハンズのイベントに関われることになりました!
その名も「渋谷ハンズお寺サークル」(2020年1月23日〜2月2日まで)。
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先日発売された『スター坊主めくりカレンダー』の企画として、ハンズで開催されるお寺特集イベントを仲間の僧侶たちとお手伝いさせていただきます。

お寺に関わる様々な物品の販売もあり、また毎日ではありませんが各種体験イベントもあります。
◎イベントの申込はこちら
1月26日(日) https://taiken-terasaa.peatix.com/
2月2日(土) https://taiken02-terasaa.peatix.com/

私は1月26日の複数僧侶による法話「仏教井戸端トーク」に出演の予定です。
聖地での任務、心してかかろうと思います (−人−)

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2020年1月号 [和庵だより]

◇ 喜びと、悲しみと ◇

国際暦2020年、仏暦では2563年、そして令和では初の年明けを迎えました。別紙の通り、昨年末には法人化記念行事を無事に賑々しく開催することができ、事後処理に追われつつもホッとした年末年始を迎えています(と思います)。

13年がかりの法人化が叶い、その記念行事は本当に喜びに包まれたものでした。1日のうちにあれほど「有り難うございます」と言うことは、そうそうないと思います。しかしその準備も佳境に入った12月上旬、親しい方の訃報が届きました。

舞台役者でもある坊守がここ10年以上関わってきたお芝居の作家・演出家である中島淳彦さんが、58歳の若さでご往生なさったのです。下北沢の劇場で坊守が出演する芝居には、なごみ庵ご縁の方々と観劇ツアーにも行っていたので、驚かれる方も多いかと思います。

ほぼ固定メンバーの女優10名でのお芝居、稽古の期間も長いので、家族のような親戚のような仲間たちです。その中心となって率いてきた中島さんは、役者陣にとって頼れる父のような存在であったと思います。そんな方が亡くなったので、法人化の喜びとともに、大きな悲しみも胸に抱えることになりました。

ご縁が深かったこともあり、記念行事の数日後、私と坊守でお通夜とご葬儀をお勤めさせていただくことになりました。ご本人の交友関係の広さを物語るような錚錚たる参列者が並び、また受付には家族のような女優陣が並びました。それに加え副導師が坊守ですから、まるで芝居のワンシーンに入り込んでしまったような感覚がありました。

記念行事の疲れか私も坊守も風邪をひいてノドの調子が良くなかったのですが、それも家庭的な喜劇作品を得意とした中島さんのシナリオのようだとご家族にはおっしゃっていただきました。悲しくも賑やかになったお通夜ご葬儀は、多くの名作を世に送り出した中島淳彦さんの最後の、いえ仏さまとして最初の作品だったのかもしれません。


◎ お 知 ら せ ◎

◎東急ハンズ渋谷店で仏教イベント「渋谷ハンズお寺サークル」(仮)開催!
1月26日(日)・2月1日(土)の予定
住職も掲載された「坊主めくりカレンダー」が全国の書店やハンズで取り扱われていることを受け、ハンズ渋谷店でイベントが開催されることになりました。
まだ詳細は不明ですが、住職は1月26日に参加の予定です。

◎写経会 午後の部 新設! 2月21日(金)15時より
今まで第3金曜日の10時30分より開催していた写経会ですが、定員一杯の状態が続いていました。それに加えEテレの番組で写経会の様子が紹介されたこともあり、新規希望者も多かったため、2月から15時の部を新設することになりました。
参加ご希望の方は、準備の都合上ご連絡ください。
用紙・筆ペンはこちらで準備してありますので、手ぶらでご参加可能です。

◎高座バトル☆ルーキーズ 2月29日(土)16時 恵比寿 寺子屋ブッダ
同じお題で落語家と僧侶がトークバトルする人気イベント。住職は今回で3回目の登場になります。お相手は若手人気落語家の桂宮治さん。お題はなんと「悪」!
お題の落語→お題の法話→トーク→自由な落語、と盛りだくさんで入場料は2500円です。

◎春のお彼岸法要 3月22日(日)13時
例年通り、法要のあと、坊守による絵本の朗読と法話を予定しています。

◦神之木地区センター写経会 1月7日(火)・21日(火) 18時30分
◦死の体験旅行
1月15日(水) 19時 豊島区 金剛院
3月12日(木) 18時30分 神奈川大学 生涯学習講座
◦自死遺族の集い 12月26日(木)・1月23日(木) 10時30分 築地本願寺にて

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