『トランスパーソナル心理療法入門』諸富祥彦 編著 日本評論社

なごみ庵にいらっしゃるTさんから紹介して頂いた本です。
トランスパーソナル…て何だろう?と辞書で調べてみると「トランスパーソナル心理学=人間性心理学を発展させ、死後の世界や宇宙空間、母胎への回帰から前世にまで戻るイメージ体験を重視する心理学。(大辞林)」とあります。

…なんだかよくわからないので本を開いて読み進めてみました。まず「トランスパーソナル」という聞きなれない言葉ですが、催眠状態などを「トランス状態」と言いますが、そのトランスとは違うようです。
催眠状態のトランスは「trance」で、この本でのトランスは「trans」というスペル。意味としては「超越する」という意味だそうです。


さて、この本は15章に分かれており、章によって筆者が異なります。私が興味を持ったのは第14章「浄土真宗とトランスパーソナル心理療法 西光義敞 著」です。

これによると、昭和30年代初めに藤田清という人物によって仏教カウンセリング(相談仏教)という考え方が起こったようです。しかし時代に早すぎたためか、それほど社会的な支持を得られなかったようです。
また、著者によると真宗僧侶によるカウンセリングは1940年代にカール・ロジャースによって提唱された「
クライエント中心療法(パーソン・センタード・アプローチ)」と馴染むのではないか、と記されています。

ロジャース以前のカウンセリングは、「解釈・忠告・暗示」を中心として行なわれていたそうです。この手法では、カウンセラーとクライエントの間に上下関係が発生し、欠点としてクライエント側に依存心が生まれてしまう事があげられます。

他宗派においては、僧侶は出家者として在家信者(一般信者)とは立場を異にした存在です。しかし真宗僧侶は非僧非俗(僧侶でもなく俗人でもない存在)・非出家仏教という立場をとり、お檀家さんの事を「同朋・同行」と呼び、あくまで対等な立場と見ます。
この考え方があるからこそ、クライエント中心療法と馴染む、と記されているのではないでしょうか。