ひょんなご縁で、「大和つくし断酒会 結成45周年記念大会」で講演させて頂きました。
大和つくし断酒会 http://tsukushidanshu.grupo.jp

もともとは、私が所属する「自死・自殺に向き合う僧侶の会」に入った依頼で、同じ神奈川県ということで私にお声がかかりました。ちなみに断酒会とは全国津々浦々に支部がある組織で、アルコール依存症の患者さんや家族が入会し、社会復帰などを目指す組織です。

最初は、自死に関する会と断酒会というものに、どういう繋がりがあるのか分からなかったのですが、打ち合わせや事前に調べものをしていくうちに、そこには深い関係があることが分かりました。
2011年版の精神保健福祉白書によると、自死者のうち15〜56%の方に、アルコール依存または乱用の疑いがある、と記されています。これは自死問題に取り組む私にとっても、予想以上の数字でした。

また、アルコール依存症(以前はアルコール中毒と呼ばれていました)は、現在れっきとした精神疾患とされ、通院や投薬による治療が為されています。
ですのでこういった大会では心療内科の医師による講演が多いのですが、今回は「いのちのミュージアム」の鈴木共子先生と自死問題に取り組む僧侶に、いのちの大切さを訴える講演をしてほしい、というご依頼でした。


当日、セレモニーや挨拶が終わり、最初に鈴木先生による講演です。
鈴木先生はたった1人のご子息を、パトカーの追跡を振り切った飲酒・無免許・無保険・無車検・スピード違反の暴走車によって失った壮絶な過去をお持ちの方で、現在は事故や事件で失われたいのちを全国に伝える活動をなさっています。
いのちのミュージアム http://inochi-museum.or.jp
私も同じ登壇者ですが、あまりの内容に聞き入ってしまいました。


ふと気づくと自分の出番。
あわてて準備し壇上に上り、1時間の持ち時間を精いっぱい、お話をさせて頂きました。
内容は、仏教とお酒の関係に始まり、断酒会の方が歩む道と仏教者の歩む道に近しい点があるのではないか、というお話。そして最後に高倉健さんの座右の銘を紹介させて頂きました。

ワイドショーや週刊誌で目にした方もあると思いますが、高倉健さんの座右は「往く道は精進にして、忍びて終わり悔い無し」というものです。

これは浄土真宗でもお勤めされるお経「歎仏偈(讃仏偈)」の一節で、千日回峰行を2度達成された故・酒井雄哉師が高倉健さんに送ったものだそうです。

假令身止(けりょうしんし)   道を求めて たとえ身は
諸苦毒中(しょくどくちゅう)  苦難の毒に 沈むとも
我行精進(がぎょうしょうじん) 願い果たさん その日まで
忍終不悔(にんじゅふけ)    しのびはげみて 悔いざらん

これを断酒会の方に向け…

断酒の道を求めて、たとえこの身は
苦難の毒に沈むようなつらい思いをしたとしても
生涯断酒を続けるという願いを果たすその日まで
忍耐し、精進し、悔いを残さない人生を送って下さい

と、エールを送る言葉とさせて頂きました。