今年は親鸞聖人のお言葉を、弟子の唯円(とされています)が聞き書きをした『歎異抄(たんにしょう)』を題材としてお話しさせて頂いています。

順番からいくと第5条なのですが、ちょっと都合があって第6条についてお話しをさせて頂きました。
第6条は「師弟関係」について親鸞聖人が説かれています。

晩年京都にいらっしゃった親鸞聖人に、関東の弟子たちから質問が届いたのでしょう。
関東での布教時代、親鸞聖人の元には多くの弟子が集いました。師が近くにいる間は疑問があれば色々と直接お聞きすればよいかったのですが、遠く京都に行かれてしまうと、なかなかそうもいきません。

さまざまな疑問や異説がはびこっていったようで、念仏の道場を開く弟子たちの間に、自分の弟子、他人の弟子、というような勢力争いも始まってきたようです。

そんな窮状を訴える弟子に向かって親鸞聖人は、「私には1人の弟子もいないよ」と言い放ったのです。
お弟子さんたち、さぞ驚いたでしょう。
きっと目が点になったに違いありません (。・・。) 

親鸞聖人は言葉を続けます。
私が自分でお念仏をこしらえて皆さんに渡したのであれば、皆さんを私の弟子と言うことができるでしょう。けれどお念仏は阿弥陀さまが永い時をかけて考えこしらえたものです。私はそれを皆さんにお伝えしただけですから、私たちは師や弟子という関係ではないのですよ。

浄土真宗が「絶対他力」と言われる所以です。
阿弥陀仏の救い、お念仏の教えに、一切自分の力を挟む余地が無い、という清々しいまでの親鸞聖人の姿勢です。
さらに「自分の弟子、他人の弟子」という争論に対して親鸞聖人は「もってのほかの子細なり」「荒涼のことなり」「不可説なり」と嫌悪感すら伝わるほどの厳しい言葉をもって叱責しています。

そして親鸞聖人は、世間的にみれば師弟関係にある方々を「御同行(おんどうぎょう)・御同朋(おんどうぼう)」と呼ばれました。上も下も無い、みな仲間なのだと説いたのです。