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無明長夜の灯炬なり 智眼くらしと悲しむな [月々の法語]

無明長夜の灯炬なり 智眼くらしと悲しむな

Amida’s Vow is a great torch in the long night of ignorance; do not sorrow that your eyes of wisdom are dark.

正像末法和讃 第35首


全文は…

 無明長夜の灯炬なり 智眼くらしと悲しむな

 生死大海の船筏なり 罪障重しと嘆かざれ

現代語訳としては…

 阿弥陀仏の本願は、煩悩の長い夜の闇を破る灯火である、

 悟りの智慧の眼が無いからといって悲しむ事は無い。

 また阿弥陀仏の本願は、迷いの大海を渡す船である、

 罪の重い身だからといって嘆く事も無い。

となります。


いつも通りカレンダーに記されているのは和讃の半分で、今回は前半が記されています。しかし前半も後半も伝えたいことは共通していて、それを違った表現で表しています。


阿弥陀仏の事を、前半では月明かりも無い真っ暗闇の中の大きな灯火にたとえ、後半では荒れ狂う迷いの海に浮かぶ頼もしい船にたとえています。

そして私たちは悟りの眼差しも持たず、愚かさの罪も拭えない身ですが、その事を悲しむな、嘆くな、と書かれています。なぜならば、そんな私たちのためにこそ、阿弥陀仏の本願があるからです。



さて、私たちは日頃いつも仏さまの事を考えて過ごしているかというと、決してそうではないと思います。過去の高僧伝などを読みますと、1日に何千回も何万回も念仏を称えるという方の話も出てきますが、私などはせいぜい1日に20回か30回か、多くても100回もお称えしていないと思います。もちろん数の多少は関係ありません。1億回の念仏も、生涯ただ1度の念仏も、どちらが優れていると言うことはありません。


金子みすゞさんも詩の中で「朝と晩とに忘れずに、私もお礼をあげるのよ。そしてそのとき思うのよ。いちんち忘れていたことを。」と言っています。信仰心の篤い土地柄で、また信仰の篤い家庭に生まれ育ったみすゞさんですら「いちんち忘れて」過ごしているのです。


では阿弥陀さんはどうでしょうか?私たちからすれば阿弥陀さんはお一人ですが、阿弥陀さんから見た私たちは60億人もいるわけです、そうそう注意深く見る事はできないでしょうか?みすゞさんは先程の詩をこう続けています「忘れていても、仏さま、いつもみていてくださるの。だから、私はそういうの、ありがと、ありがと、仏さま」


どうやら私たちは1日忘れていても、阿弥陀さんはずっと見ていてくれ、また支えてくれているようです。そう思うと、おちおちアクビも出来ませんが、もちろん実体のある誰かが見ている、というわけではありません。でもその仏さまに「ありがと、ありがと」という気持ちを込めてお念仏を称えるみすゞさんの姿が目に浮かびます。



さてさて、阿弥陀さまの本願を灯火や船にたとえたこの和讃ですが、私は「船乗りのたとえ」という好きな話があります。


船が転覆し、船乗りが海に投げ出されます。もちろん船乗りですから泳ぎは達者。陸地に向かって泳ぎだしますが、大海原の真ん中、いくらも進まないうちに疲れてしまいます。海はまるで魔物の様に彼を引きずり込もうとしています。

いつか体力も尽き、もうダメだと泳ぐのを諦めると、今度は海が逆に彼を支えて浮かべてくれます。助かりたいともがいているうちは魔物のようだった海が、力を抜いて委ねてみれば、いのちを支える海であった事がわかります。

この事に気づいた船乗りは、時には休み、時には泳ぎ、やがて陸地にたどり着く。というお話です。


私にも似た経験があります。近所のお寺にお彼岸法要にお手伝いに行きました。そこのご住職は体調を崩しているので、坊さんは私一人、お参りの方は50名ほど。いつもはお参りの方を先導してお経をあげないと、と張り切って大声を出すのですが、その時は私も風邪をひいて喉を痛めていました。


その事を法要前に伝えてからお経を始めると…お参りの方々がいつもよりしっかりと声を出し、かすれ声の私を逆に励まし、支えてくれるのです。それに気付いたとき、お経を上げながら感動をしてしまい、さらに声が詰まった、という事がありました。


このとき支えて下さったのは、もちろん阿弥陀さまではなく、お参りの方々です。ひとりひとりのお気持ちが私を支えて下さったのです。しかし、肩肘張って先導するぞと息巻いていた私に、実は支えられていた事を気づかせてくれたご縁があります。

そのお寺の住職が体調を崩していた事、自分も風邪をひいていた事、他にも様々な縁が重なって、私に気づきを与えてくれました。その計り知れないご縁を仏さまとして手を合わせるのではないでしょうか。


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