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2012年7月の法語 [月々の法語]

生死のうみにうかみつつ 有情をよぼうてのせたもう

From a ship crossing the ocean of birth-and-death, They[Amida with Kannon and Seishi] call us all to come aboard.

『正像末和讃』より


 今年のカレンダーの言葉は、親鸞聖人の様々な著作から抜粋されています。今月は正像末和讃からです。

 カレンダーでは和讃の後半2行が書かれていますが、和讃は4行で書かれています。また、カレンダーは西本願寺版がテキストになっていますが、違うパターンもあります。


弥陀観音大勢至 大願の船に乗じてぞ

生死の海にうかびつつ 衆生をよばふてのせたまふ


訳すと…

阿弥陀仏と観音菩薩・勢至菩薩が、人々を救う願いの船に乗っている。

その船が煩悩の海にうかびつつ、人々を救おうと呼びかけていらっしゃる。

となるでしょうか。


 ちなみに浄土真宗の本尊は阿弥陀仏のみを安置する事が多いのですが、派によっては左右に観音・勢至の両菩薩を従えた「阿弥陀三尊像」が本尊ですので、和讃では「大願の船」に3人(?)で乗っていらっしゃるのですね。


 想像してみるとすごい情景です。迷いの海に浮きつ沈みつしている私たち、そこに大きな船がやってくる。助けを求めて船を見上げると、そこには阿弥陀仏が。しかも阿弥陀仏だけでも心強いのに、観音菩薩・勢至菩薩も同乗して一所懸命に私たちを助けようとして下さっている。

しかも上からロープを投げて救助するだけではなく「どこまでも行って救うぞ」と誓いを立てた阿弥陀仏ですから、浮き輪を担いで自ら海に飛び込んで助けに来て下さるに違いありません。まるで海上保安庁・特殊救難隊「海猿」ような心強さです。


 …少し脱線しました。

 さて、煩悩の海でおぼれかけているのが私たちの姿ですが、しかし私たちは自分がおぼれかけている事すら気付けないのです。欲望を正当化し、仏の教えを知りつつも背くようにしか生きられない私たちです。


 テレビの衝撃映像などの番組で、窮地に陥った動物を救う、という映像が時々流れます。マンホールに落ちた犬だったり、氷の湖に落ちた犬だったり、崖っぷち犬というのもありましたね。…なぜか犬が多い気がします。あ! 高い樹に登って降りられなくなった猫、というのもありますね!


 見ていると、せっかく消防士さんが助けに行っても、やはり言葉の通じない動物です。怯えと混乱で逃げたり、救助者を噛んだり引っかいたり…せっかく助けたらすっ飛んで逃げてしまったり…動物救助もなかなか大変です。


 でもこれを「動物だから」と笑ってはいられません。前述の通り、私たちもおぼれかけている事に気付かず、救いの手から逃げ出そうともがいている衆生だからです。そんな私たちをも救おうというのが阿弥陀仏ですが、しかし親鸞さまは「解毒薬があるからといって、わざわざ毒を飲むな」とおっしゃいました。救われる事に驕り高ぶって、わざわざ悪行を積むのは謹むべきだ、と言ったのです。


 知らず知らずのうちに悪事に加担してしまった、または悪い事をしないと生きていけない…こんな人々を親鸞さまは哀れみました。そして自らの犯した悪事に怯える人々に「悪事は妨げとならない」と希望を説いたのです。決して、好き放題に悪事をはたらいて良いなどと言うわけはないのですが、一部曲解をする者たちが現れ、親鸞さまを困らせたようです。

 もう一度言いますが「薬あればとて、毒を好むべからず」です。心して下さい。


 ところで…私の家には二日酔いに効くというウコンのサプリメントがあります。…私も自分がおぼれている事に気付いていないようです(苦笑)。


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コメント 4

長さん

阿弥陀様は一般的に、死んでから地獄へ落ちないようにする働きの有る仏様。勢至菩薩は、地獄に落ちる原因として、主に戦争厄がある兵隊さんが、地獄に落ちるようなケースのを防いでくれる働きの有る仏様。ところが観音菩薩は、これとはかなり異質なんですね。結婚の相手が居なくて困っているような独り者に、相手を探してくれるような、縁結びの神様と同じ働きをする仏様(厚木に、縁結びの寺、長谷寺というのがありますね)、とイメージします。大きく違っているでしょうか? なお、神社の神様と観音様の差は、望みをかなえ益を得る側の人間に、益をあたえるのが最終目的ではなくて、益を得た、その現世の人間に、「因縁の理」を悟らせるのが、真の狙いのようですね。信心行為の局面だけではなく、現実社会・世界の中に、仏様はだいぶん溶け込んでいるように思う。単に知識教養で、仏様を知る以上の力が、仏様達には今も全く当然ですが有るようですね。
by 長さん (2012-07-27 11:01) 

ボーズandカナコ

>長さんさま
お久しぶりです (^_^)

私の認識ですと、阿弥陀仏は一切衆生(生けとし生けるもの)を救済する仏さま。地獄に堕ちるかもしれないものを浄土へお連れ下さる仏さまです。
また勢至菩薩は智慧を司る菩薩で、観音菩薩は慈悲を司る菩薩と捉えています。
長さんがおっしゃるような、勢至菩薩が兵隊さんを救い、観音菩薩が縁結び、というのは知りませんでした。

全国各地のお寺で、様々な仏や菩薩が信仰対象になっていて、多くのお寺で「こんな御利益があります」と謳っていると思います。
なので、勢至菩薩があるお寺では兵隊さんを救い、他のお寺では受験祈願、また別のお寺では商売繁盛となっているかもしれませんね。

頂いたメッセージの後半、神さまと観音様の差の話は面白く読ませて頂きました。御利益を与えるのが、目的なのか手段なのか、という事でしょうね。
by ボーズandカナコ (2012-07-28 20:45) 

長さん

コメントありがとうございます。
勢至菩薩:戦争厄関連は、方々にあると思いますが、
WIKIPEDIAと、宮城県大和町の法楽寺という所で見ました。
観音菩薩は、祈願する人間の言う通りにしてくれる所がミソ。
祈願人は「それでめでたし」と思うのですが、話に続きがある
場合に、観音様は好んで、時には意地悪で、願いを優先的に
叶えて、くれているように思いますよ。しかし、叶ったのに
願を立てた人間が、時には後悔しても、冷静に自分で顛末を
振返って反省すると、結局は、その人間の為になっているん
ですね。有り難い事だと思います。観音様には手が千本有る
のでケースは、個々に様々だと思いますが。
by 長さん (2012-07-30 17:30) 

ボーズandカナコ

観音さまはやたらと種類が多いですよね。
人気のある菩薩さまなので、さまざまな形で信仰されたという事でしょうね。
by ボーズandカナコ (2012-07-31 09:46) 

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