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85の手習い、95の別れ [その他色々]

先日、とあるご葬儀の縁がありました。
90歳代のご夫人が亡くなり、そのご主人とお子さんがご遺族。故人の年齢もあり、少人数でのお見送りでした。


お通夜の読経が終わり、会食の席に招かれた時のこと。喪主であるご主人がカメラを取り出し、集まった親族や私を被写体にシャッターを切ります。

コンパクトデジカメとしてはボタンも多く、少し凝った造りのカメラを操る喪主さんは御年95歳。その方に「はい、チーズ」と言われ、でもお通夜の席ですから破顔一笑というわけにもいかず、微妙な表情になってしまいました。


ひとしきり撮影が終わって席に戻った喪主さんに「ずいぶんカメラの扱いが上手ですね、若い頃からの趣味だったのですか?」と尋ねると、ほんの10年ほど前、その方が85歳になってから撮りはじめたとのこと。
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詳しく聞くと、10年ほど前に奥さまが体調を崩し施設に入り、あまり外を出歩けなくなってしまったのだそうです。それから10年、夫はほとんど毎日妻を見舞いに行きました。外を出歩けなくなった妻に四季の光景を見せたくて、写真を撮っては通い、写真を撮っては見せ。

淡々とお話しになるその物語りを聴き、胸と目頭が熱くなってしまいました。凪いだ海のようだけど、とても深い愛情が感じられました。


「お寂しくなりましたね」と私が問うと「いや、もう仕方の無いことだから」と淡々とおっしゃいます。でもそれは、充分すぎるほど奥さまに愛情を注いだから、だから穏やかでいられるのだろうな、とも感じました。

こんな関係を築けるのだったら、死だってそれほど恐ろしくはないのではないでしょうか。また、往く場所がしっかりと信じていられるのだったら、より不安も薄れるかもしれません。これからもお付き合いが続いていきますが、一所懸命に浄土の教えを説かせて頂きたいと思います。

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