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おぼうさんどっとこむ [その他色々]

以前ニュース番組のワンコーナーで紹介されていた「おぼうさんどっとこむ」という会社があります。簡単に言うと通夜葬儀に(いわゆる世間相場より)安価に僧侶を派遣をする会社です。
あれ?お寺って会社じゃなくて宗教法人じゃないの?と思った方も多いと思います(スルドイっ!)。しかしこの「おぼうさんどっとこむ」の代表 林数馬さんは、あえて会社として僧侶派遣を立ち上げたんです。


今日(2009年6月11日)、12チャンネルの「ルビコンの決断」という番組でこの会社の特集が組まれていました。番組は林氏が苦悩と苦闘の末に、今までの常識を覆すほどお布施を低価格に設定します。そして先行きの見えない事業が軌道に乗る…そんな軌跡が描かれていました。


私もこの「おぼうさんどっとこむ」に登録しようか、と悩んだ時期があります。というか今でも悩んでいます。従来のお寺はお檀家さんがいらっしゃいます。基本的にお檀家さんで亡くなる方が出れば、お付き合いのあるお寺(菩提寺)に通夜葬儀をお願いし、またその後も四十九日や一周忌などの法要を頼まれます。

私はお寺で勤務し、そこからお給料をいただいています。と同時にこの「なごみ庵」を立ち上げて、自分の信ずる仏教を弘めたい、伝えたいと念願しています。けれど日本人の多くはお寺に通う習慣がありません。しかも歴史ある立派なお寺ならともかく、借家の一部屋を仏間にしているなごみ庵に入ってみようと思う方はなかなかいらっしゃいません。

人が来なければ、仏教を伝えられません。立派なお寺を維持するにはお金がかかります。そんなジレンマに悩んでいる中、久しぶりに見た林氏の姿にまた考えさせられています。

お布施の価格を非常に低く設定する事で、お布施が払えないと悩んでいた人々に光明を与えた姿は素晴らしいと思います。反面、安かろうが高かろうが、お布施に価格を決めて良いものだろうかとも悩みます。

なぜなら、お布施は価格が決まってないからこそお布施なんです。価格が決まればそれは料金であり、読経というサービスに対する料金になってしまう。そうなれば僧侶ではなく、読経屋さんになってしまうのではないか…。
それに、どんなに安価に設定しようと、それでも払えない人も存在するでしょう。お布施であれば、どんなに小額であっても事情を汲んでお勤めをする事ができます。しかし定額になってしまえば、他のお客さんの手前、それ以下でお勤めする事は出来ません。

さて、どうしようか…。悩みは深まるばかりです。

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つる

僕もたまたま見てました。
いろいろ考えさせられますね。
低価格化によってサービス合戦、値引き合戦になりはしないかと危惧したりもしますし。
また「布施はお寺への寄付だ」と仰っていましたが、それも本来の意味からは外れていると思います。
一般的な認識はそうなんでしょうけどね。
by つる (2009-06-12 00:13) 

ボーズ

>つるさん
確かに値引き合戦がおこるかもしれません。ただ、他の仕事をしていて副業・バイトとしてお勤めをする方と、お寺を守っている僧侶と、同列にされては困ります。実際、広い境内や大きな本堂を有していれば、どうしたってお金はかかる訳ですし。

三ツ星レストランのシェフが作る料理と小銭で買ったインスタント食品とは「空腹を満たす」という観点で言えば同じかも知れません。しかし多くの面で両者はあきらかに違いますよね。
その違いを一般の方がわかって下さるかどうか…。

ちなみに「お布施はお寺への寄付」の本来の意味と言いますと…お寺じゃなくて僧侶という事ですか?それとも法施に対しての財施ということでしょうか?
by ボーズ (2009-06-12 00:34) 

つる

すいません、ちょっと理解し切れていないのですが・・・。
同列にできないというのはどういうことでしょうか。
三ツ星レストランのシェフがお寺の僧侶で、インスタント食品がアルバイト僧侶という関係ですか?
そこには明確な違いがあって、お布施にも影響するということでしょうか。お布施に額を決めるべきかということはボーズさんも仰ってますよね?僕も基本的には同じ考えです。
僕が言いたかったのはお布施の額の高低ではなくて、お布施に対する意識が変わっていくのではないかということです。
それこそ「お経料」という意味合いが強くなっていくのではないかと。

お布施の意味はまさに仰るとおりです。
財施も法施も自らのためにするのが本来でしょう。
だから施す側も施される側も感謝の気持ちをあらわすことは、礼儀としてはあたりまえですし。
まあ現実的にそう思っている人は少ないので、あまりこだわってはいないです。ただ出演している僧侶の方が「寄付」と言い切っていたので「それは違うだろう」と。
こういう誤解を生むのは僧侶にも責任があるのでしょうが。

by つる (2009-06-12 02:55) 

白牛

社長は天台宗の僧侶のようですね。

先日天台宗の別格本山をお参りしました。
かつてたくさんの修行僧が活発な問答を戦わせていたであろう巨木に囲まれた静謐な境内には先祖、水子供養の看板、お守り売り場があり、本堂にはなぜか護摩壇、その前には不動明王、その横にはご利益大黒天やら神様やらなんでもありでした。

これが天台大師智顗、傳行大師最澄の別格本山・・・。
親鸞聖人が修行されたあの天台宗はどこへ行ってしまったのか・・・。悲しくなりました。

社長の気持ちの中には、そのような現状を憂う心もあるのかもしれませんね。


追伸 
最近「先祖供養」という考え方の怖さを考えています。
by 白牛 (2009-06-12 07:40) 

ボーズ

>つるさん
(ブログのコメントでは細かいニュアンスが伝わらないかもしれませんが…)
レストランの喩えはおっしゃる通りです。寺を護る僧侶が必要な財施と、僧衣1枚だけでお勤めしている僧侶とでは、経済規模が違いますよね。
家族が亡くなり、菩提寺の住職に通夜葬儀を頼む。お寺に日常的に布施をする方は少ないでしょうから、通夜葬儀の時にある程度の額のお布施をいただく。私は通夜葬儀の布施をこう理解しています。
対して、通夜葬儀だけ依頼する僧侶に、上記のような意味合いと同じ額の布施を出して良いのだろうか?と思っています。通夜葬儀だけを狙うアパマン僧などの問題も出ていますしね。
言い方を変えると「先祖・現在・子孫と付き合いをしていく菩提寺ー門徒の関係」と「2日間だけの付き合い」を同列には語れない、という事です。

あと、もちろん布施の額は決めるべきではないと思います。「お経料」という言葉も困りますね。

改めて思ったのは、布施と寄付は似て異なるものだ、と言う事です。番組に出ていた方が「寄付」と言ったのは、細かい点ですがよろしくなかったかもしれませんね。


>白牛さん
知っている限り、真宗寺院以外では何かしら現世利益を謳っているように見えます。この点で真宗は少数派だと思います。実際、お守りもお札も無い、祈祷も祈願もしない真宗寺院が、よく800年続いていると思います(笑)。

ちなみに親鸞聖人がお山を降りたのは、国家・権力者の安寧を祈願し、堕落した僧の姿に失望したという面もあるでしょうから、白牛さんが御覧になった別格本山の姿は、親鸞聖人が見たものと本質的に変わってないかもしれませんよ。

「追伸」についても詳しくお聞きしたいです。
by ボーズ (2009-06-13 15:02) 

チェルニー大尉

>ボーズ様
>おぼうさんどっとこむ
お布施や檀家さんからの寄付は切実な問題なんですよね。
特に私の家のような兼業僧侶の場合は・・・。
母はもてはやしているのですが、私はどうも迷ってしまいます。
もちろん、社長さんの決断や行為はある意味賞賛に値するもの
であることは間違いないと思うのですが、同時に宗教と商売の
境目をどこに設定するかというのは簡単に割り切れるものでは
ないと思いますし・・・。
by チェルニー大尉 (2009-06-17 21:13) 

ボーズ

>チェルニー大尉さん
わかります、わかりますよ〜。
「おぼうさんどっとこむ」をどう捉えるかでその人の立ち位置が見えてくる気がしますね。
こういった論議を巻き起こすだけでも、大きな事をされていると思います。
by ボーズ (2009-06-18 12:28) 

白牛

>お布施が払えないと悩んでいた人々

本当にそんな方ばかりでしょうか。マンション僧侶は本当に正義?の味方なのでしょうか。
たくさん持っているくせに足らん足らんと走り回って、なんだかんだと理屈をつけて、金を払いたくない。仏ほっとけ、しかし葬式しないと、戒名がないと不安でしょうがない。そんな輩が多いと思います。

このサービスを提供する側も喜ぶ側も、大きく欠けている点は真摯に「法」を伝える、「法」を聞くという姿勢がないことです。
両者ともきれい事を言っているだけの不真面目な輩だと思います。
by 白牛 (2009-06-25 11:06) 

ボーズ

>白牛さん
おっしゃる通り、それなりの生活をしていても、お布施を1円でも安く済ませたい、と思う方が大多数ではあると思います。そして、マンション坊主が正義の味方だとは思っていません。

ただ、歴史あるお寺・立派な伽藍のお寺の「僧籍所有者」でも、誉められない方もいるでしょう。
マンション坊主でも、人格的に優れた方もいらっしゃると思います。

顔を合わせてお話ししたいですね〜。
by ボーズ (2009-06-25 18:58) 

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