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2011年4月の法語 [月々の法語]

仏号はなはだ持ち易し 浄土はなはだ往き易し

The Name of the Buddha is exceedingly easy to keep and say; the Pure Land is exceedingly easy to reach.

『教行証文類より』


 今年のカレンダーの言葉は、親鸞聖人の主著である『教行証文類(教行信証)』から抜粋されています。


 さて、今月の言葉は『楽邦文類』という書物に記されている、中国の張掄という人物の言葉です。「仏号(お念仏)は非常に保ちやすく、極楽浄土に往くのは非常に易しい事である。」という意です。これに続いて「八万四千の法門の中で、これ以上の近道はない。明け方のわずかな時間を割いても、ぜひ永久に損なわれる事の無い功徳をたくわえるべきである。」と続きます。つまり、お念仏によって極楽浄土へ往生する道があるんですよ、と強く勧めて下さっているのです。


 では、その浄土とはどういう所なのでしょうか? 最近は葬儀の挨拶などでも「故人は天国へ旅立って」と「天国」という言葉を使う方が多くなりました。私は天国というと、やはりキリスト教を連想してしまうのですが、別におっしゃっている方にはそんな意図は無く、「死後に行く良い所」という意味合いで使っておられるのだと思います。だから乱暴な言い方をすると、天国と言おうと、浄土と言おうと、桃源郷でもヘブンでもザナドゥでも、どれでも良いのでしょう。


 阿弥陀経には浄土が叙景的に記されています。金銀宝珠で飾られた世界で、清く澄んだ泉には車輪のように大きな蓮が咲いています。美しい音楽が流れ、空から花びらが降り、鳥も美しい声で鳴いている…そんな世界だと表されています。

 でももちろん、現代の私たちにとって、それが現実に地球上に存在する場所だとは言えません。またそういった異世界があって、死後にこの通りの世界に行くんですよ、とも言えません。古代インドや中国で思い描かれた、理想の世界のイメージだと言えるでしょう。


 さて、極楽浄土とはちょっと違いますが、仏の国とはどういったものでしょうか。本日、いつもの正信偈の前にお勤めしました「鎮國文(ちんこくもん)」は、大無量寿経というお経の中の一節で、建築前の地鎮式や、お寺などの落慶の時にお勤めされます。


仏所遊履(ぶっしょゆうり) 国邑丘聚(こくおうくじゅ)

靡不蒙化(みふむけ) 天下和順(てんげわじゅん)

日月清明(にちがつしょうみょう) 風雨以時(ふうういじ)

災厲不起(さいれいふき)国豊民安(こくぶみんなん)

兵戈無用(ひょうがむゆう) 崇徳興仁(しゅとくこうにん)

務修礼譲(むしゅらいじょう)


仏の歩まれる所は、国も町も村も、その教えが広がらない所は無い。

世の中は平和に治まり、太陽も月も明るく輝き、風邪や雨も程よく、災害や疫病もおこらない。

国は豊かで民は安らかに暮らし、軍隊や武器も不要になる。

人々は徳を備え思いやりの心を持ち、礼儀正しく譲り合いの心を持つ。


 という意味になります。もちろん現世利益を説かない親鸞聖人の教えですから、この偈文を読む事によって不思議な力が働いて、その通りの世界が出来上がる、なんて事ではありません。

 ただ、これから建築にあたり、その建物が建つ国がどんな国であって欲しいか、それを願い念じるという意味があろうかと思います。


 では、私たちが住む国は、どれほどこの理想の国に近づいているでしょうか。

仏の教えは確かに広がっていますが、それを正しく理解している人は多いとは言えません。

様々な事件・事故はありますが、おおむね平和に治まっており、四季の変化に富んだ美しい景色を見る事も出来ます。

ただし、つい先日大地震が起き、またどれほど医学が発達しても病が無くなる事はありません。

世界的に見れば非常に豊かな国で、まあ安らかに暮らしている人が多いようですが、年間に3万人もの自殺者が出ている事は見過ごせない事です。

憲法で軍隊武器を持たない事を謳ってはいますが、実質的には軍隊武器を所有していますし、他国の軍事力に頼っています。

徳と思いやりと礼儀と譲り合いの心。これは先日の大地震の時、被災者の落ち着いた行動や秩序を見た他国の人が驚愕をするほど高い水準にあります、が、全ての人がそうだとは言えません。


…仏さまから見たら、55点ぐらいでしょうか?


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コメント 2

リーベン三角

偶然ながら自分も浄土真宗です。そんなに熱心じゃありませんが…
でもクリスマスよりお花祭りのほうがしっくりきます。
by リーベン三角 (2011-05-02 23:10) 

ボーズandカナコ

>リーベン三角さん
自分自身も坊さんになる前はそうでしたが、花まつりよりクリスマスの方が有名ですよね。
もっと花まつりを賑やかにしたいと思います。
by ボーズandカナコ (2011-05-03 08:45) 

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