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2011年7月の法語 [月々の法語]

煩悩の氷解けて 功徳の水となる

In the ocean of Amida’s Primal Vow, the ice of our blind passions melts and become the water of virtues.

『教行証文類より』


 今年のカレンダーの言葉は、親鸞聖人の主著である『教行証文類(教行信証)』から抜粋されています。

 今月の言葉は、もう何度もお伝えしているかもしれませんが「他力というのは阿弥陀如来の『衆生を救いたい』という願いである」ということです。



 この言葉では、私たちの凝り固まった煩悩を、冷え固まった氷に譬えています。そして煩悩の対極にある悟り・功徳を豊かな水に譬えています。しかし対極ではあるけれど、まったく無縁のものとはしていません。氷がとければ水となるからです。つまり、初めから煩悩が無いような人が仏さまに近づいていけるのではなくて、大きな煩悩、悩み、苦しみを抱えた人こそが、その氷のような煩悩を功徳の水にしてゆける、と説かれています。


 ちなみに、普通氷は「溶ける」の字を使いますが、親鸞聖人の言葉では「解ける」を使っておられます。この文字を使う場合は、絡まり合った紐が解ける、あるいは怒りやわだかまりなどの負の感情が解決していく時です。わざと「煩悩の氷解けて」という書き方をしたのだと思います。


 親鸞聖人の和讃にも、このテーマに沿ったものがあります。

「罪障功徳の体となる 氷と水の如くにて 氷多きに水多し 障り多きに徳多し」や、「無碍光の利益より 威徳広大の信を得て 必ず煩悩の氷とけ すなわち菩提の水となる」などです。私の好きな和讃でもあります。



 親鸞聖人の一生を追っていくと、様々な出来事がありました。その中で、最も生命の危険にさらされたのではないか、と思われるのが山伏弁円との出会いです。


 越後に流罪にあった親鸞聖人が、赦免された後関東に移住をします。そこで布教活動をして、念仏の教えがひろまってゆくのですが、その土地に以前から勢力を持っていたのが山伏たちでした。ちょうど なごみ庵の壁に、天狗の木像が写ったカレンダーがありますが、鼻以外はこういった姿をしていたのだと思います。


 その山伏たちの頭領が弁円ですが、山伏たちの信仰と念仏の教えはまるで正反対。山中で修行をして霊力を得て、加持祈祷を主とするのが山伏。対して修行を排して阿弥陀仏の他力にすがり、祈祷や占いとは全く無縁の念仏者。この両者が相容れるわけがありません。


 そんな中、人々が次第に念仏の教えにひかれ、山伏たちから距離を置く様子を見て、ついに弁円は親鸞聖人を殺めんとするのです。現代風に言えば「親鸞聖人殺害未遂事件」というところでしょうか。弁円は親鸞聖人が通るであろう山道で何度も待ち伏せをするのですが、いつもすれ違ってばかりで思いを果たせません。


 焦れた弁円は、ついに直接親鸞聖人の草庵に。刀を持ち弓矢を担いで大声で親鸞聖人を呼ぶ弁円。するとそこに、温顔の親鸞聖人が友でも迎えるように現れる。すると山伏弁円、その尊顔を見た途端に殺意が薄れ、後悔の涙が溢れ、ついには刀を捨てて弓矢を折り、親鸞聖人の弟子となったのでした~~。


 昔話でしたら、これでめでたしめでたし、という感じですが、実際にはどうでしょう。殺意をもって訪れた相手がニコニコと出てきて、その顔を見ただけで悪意が消し飛んでしまう。そんな単純ではないと思います。


 どんな経緯があったのか…親鸞聖人の生涯は色々な作家さんによって小説などにされていますが、それぞれ智恵をしぼってエピソードを創っていらっしゃいます。


 私としては、おそらく弁円さんは何か問題や悩み事を抱えていたのではないかと思います。その悩み事は、自分が山伏としてのあり方に疑問を持つような出来事だったのではないでしょうか。しかし今までの山伏としての生き方を、そうそう変えるわけにはいきません。


 そんな中、親鸞聖人の教えを耳にして、半分信じられない、半分信じたい。そんな様々な思いがない交ぜになりながら親鸞聖人の庵を訪れたのではないのかと思います。


 ここで親鸞聖人が血気盛んに出てきたら、やはり売り言葉に買い言葉で争いになっていたかもしれません。聖人がリラックスをして出てきたからこそ、話し合いになったのでしょう。そして弁円さんの抱えていた問題=煩悩がほどけていって、親鸞聖人の弟子となるような、生き方の変化に繋がったのではないでしょうか。


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