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2013年10月の法語 [月々の法語]

世の中が便利になって 一番困っているのが 実は人間なんです

The world has become convenient, but the most inconvenienced are actually human beings.

浅田正作

 今年のカレンダーの言葉は、様々な念仏者の言葉から選ばれており、10月の法語は浅田正作さんのお言葉です。浅田さんは大正8年生まれ、今年で94歳、 還暦を過ぎてから仏教を学び始め、僧侶の資格を取った方です。また多くの詩を書かれ、出版もされているので、ジャンル分けをすれば詩人ということになります。

 さて、今月の言葉ですが、けっこう頷きながら読んだ方も多いんじゃないでしょうか。たしかに科学技術の発展で、毎年毎年便利なものが発明されますね。でもそれだけ世の中が良くなっているかというと、どうもそうではない。

 最近駅のホームを歩いていると、頻繁に「スマートフォンの画面を見ながら歩くと、線路に転落する危険性があります」と注意喚起の放送が入ります。昔の携帯電話であれば、話をしながら歩く分には前を見ているから線路に落ちることはまずない。けれどスマートフォンは小型のパソコンのようになっているので、話すだけではなく画面を見て色々情報が取得出来る。それで、落ちたり人とぶつかったりすることが増えているのでしょう。


 携帯電話で話すのも、歩いている分にはそれほど問題ありませんが、自転車や車を運転するとなると事故の元になります。だいぶ前ですが、運転中の携帯電話の操作は禁止になりましたが、それだけ事故が増えたのでしょう。


 原子力だってそうです。開発された当初は「夢のクリーン・エネルギー」と言われていて、日本のように石油やガスが採れない国では理想的だったはずですが、今どうなっているか、もうお話しするまでもありませんね。

 

 先日、築地本願寺で自死者の追悼法要があって、スタッフとして参加をしてきました。厳かな法要があり、そのあと遺族方数名と班を作りお話しを伺う「分かち合い」がありました。お話の内容は紹介出来ませんが、聞いていて感じたのは、「世の中が便利になって、それが原因で自ら命を終えた方が増えたのでは」ということです。つまり、使って便利になるはずの道具に追い回されて、疲れ果ててしまったのではないか、ということです。

 とは言っても、今さら電車も車もない、パソコンも携帯電話もない、そんな状態に戻れるかといえば、それは難しいことでしょう。これからも次々と便利なものが発明されるでしょうが、果たして使いこなせるのかどうか。

 今月の言葉は、ただ機械が発達して人間が振り回されて困っている、という問題ではなく、機械の発達の原因である私たちの欲望に、私たちが振り回されている、ということでしょう。仏教のことばに「小欲知足(欲を少なくして、満足することを知る)」という言葉があり、高度成長時代を過ぎた今の日本や先進国で大事にされるべき言葉かと思います。…私は自分の欲をコントロールすることなど出来そうにありませんが。

「畜生」 浅田正作

交差点に差しかかったら 信号が黄色にかわった

ブレーキを踏みながら 「チクショウ」と言った

あさましや 畜生は 仏法聴聞にゆく 車のなかにいた


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