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2014年2月の法語 [月々の法語]

人は法を求めるに止まって 法に生きることをわすれている

People seek the Dharma but stop short of living it.

高光大船(たかみつ だいせん)

 今年のカレンダーの言葉は、様々な念仏者や僧侶の言葉から選ばれており、2月の言葉は明治生まれ、大正昭和期の僧侶、高光大船師の言葉です。石川県金沢市の大谷派寺院の生まれで、暁烏敏(あけがらす はや)、藤原鉄乗(ふじわら てつじょう) とともに“加賀の三羽烏”と呼ばれた方です。


 高光師のエピソードで有名なものは「仏法と鉄砲」という話です。

 なごみ庵では12月に皆さんにお参り頂き、親鸞聖人の命日を機縁とした報恩講という法要をいたします。この報恩講、地域によってはご門徒さん各家庭でも勤められるのですが、高光師がある家にお参りに行ったのだそうです。

 その家では両親だけでなく息子さんも待っていてくれたが、見るからに不機嫌。話を聞くと、彼は国鉄の職員でその日は非番、映画でも観に行こうと思っていたら両親に「報恩講やから家にいて一緒に参ってくれ」と頼み込まれたんだそうです。せっかくの休日が…という思いがあって不機嫌になり、高光師に「今日は厄日だ」とまで言いました。

 すると高光師、青年に向かって「まあせっかく会えたんだから、仏法について何か聞きたいことはないか?」と尋ねると「難しいことはようわからんから、仏法についてひと言で言ってくれ」と返してくる。それに対し高光師は「仏法は鉄砲の反対」という言葉を口にされたのです。

 「ブッポウとテッポウ」、言葉は似ていますがさっぱり分かりませんね。その青年も「何じゃ?」と重ねて聞くと「鉄砲は生きているものを殺す、仏法は死んだものを生かす」と答える。

 皆さんこう聞いたらどう思われますか? ご臨終です、と亡くなった人が生き返るのが仏法なのかと勘違いしてしまいそうですね。その青年も同じく勘違いしますが、高光師は「棺桶に入っているのは『死骸』だ、お前さんのようなものを『死んだもの』と言うんだ」。

 これには青年も手足を動かし「自分は生きている!」と怒ります。しかし腹を立てた青年に高光師は「蒸気機関車に石炭を食わすと、定められたレールの上を走り出す。あれは動いているけど生きているとは言わない。お前さんも口の中に飯を放り込むと、習慣という定められたレールの上を走り出す。それは動いているんで、生きているとは言わない!」と言い放つのです。

 青年にとってはまさに厄日だったのかもしれません。しかしこのやり取りで青年はハッと気付くものがあったんでしょう、その後は仏法を聴き続けて素晴らしい念仏者になったのだそうです。

 前置きが長くなりましたが、今月の言葉を読んで、いずこかのお寺の法話会に通って来る対照的な2人のご婦人のお話を思い出しました

 片方のご婦人は婦人会の役員もなさっている熱心な方で、法話が終わるとよく住職に「今日も有り難いお話でした。帰って主人や嫁に聞かせたいと思います」とグチ交じりで仰る。住職はそうかそうか、と頷いて聞いています。

 もうひとりのご婦人は物静かな方で、やはり熱心に通って来る。自分から話しかけてくることはないが、ある時住職が話しかけると「お話を聞いていて、我が身の至らなさに気付き、毎朝早くに仕事に出る夫にお弁当を渡した後、そっと手を合わせて見送っているんです」と仰ったんだそうです。

 しばらくの後、役員のご婦人は相も変わらず夫や嫁のグチを言いながら通って来る。もう一人の物静かなご婦人は、時々ご主人も一緒に聴聞に見えるようになった、というのです。

 役員さんは仏法を道徳か何かのように捉えて、他人事として聞いているのでしょうね。だから「夫や嫁に伝える」と言い、自分の身に当てはめようとしない。仏法を道具のように求めているだけなのでしょうね。

 物静かさんは、お寺で聞いた事を夫に「あなたもこうしなさい、たまには話しを聞きに来なさい」なんて押しつけがましいことはいわないのでしょう。けれども妻の様子を見たご主人が、自発的にお寺に来るようになった。仏法に生きているから、それがまわりの人にも自然と伝わっていくのでしょうね。


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コメント 2

長さん

なるほど。金沢はさすがに加賀一向一揆の国。旧国鉄職員の方が、後に熱心な門徒さんになられたのも、街中が、尾山御坊から日本海の海端に至るまで切れ目なく、御先祖門徒衆のオーラに、深く包まれているからに違いありませんねぇ。南無阿弥陀仏。
by 長さん (2014-02-27 09:14) 

ボーズandカナコ

>長さんさま
そういった土地柄に育てられることを「土徳」と言うそうです。
by ボーズandカナコ (2014-02-28 21:50) 

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